小さなな会社の広報戦略室

【AI力ランキング】日本9位に後退

順位の下落はなるべくしてなったのか?

米スタンフォード大学が調査したAI(人工知能)国力のランキングで日本はかつての4位から最新では9位へと後退しました。これは一過性の出来事ではなく、投資、研究開発、人材、ガバナンスが同時多発的に滞っていることだという指摘があります。

対照的に、韓国は産官学の強靭な連携で、UAEは国家ビジョンと巨額投資で、短期間に存在感を高めています。残念なことに日本は強固なインフラや現場の品質という資産を持ちながら、その資産を未来の競争力へ変換する推進力が弱い・・・・

日本の評価が割れる理由:指標が測っているものが違う

AIの国際指標は複数あり、評価軸も目的も異なります。AI準備度インデックスのように“基盤体力”を測るもの、Tortoise Media(英)のように発表研究・開発・投資・人材・政策を重視するもの、そしてAI国力ランキングのように“動的な活動量と勢い”を見るものなどなど。

日本はインフラや通信、スーパーコンピュータの整備といった資産は強い。一方で、論文の国際的な影響力や、資金と人材を集めて新しい価値を早く市場に出すダイナミズムでは韓国・UAEに後れを取っている感じです。つまり、日本の現状はさほど悪くないが、制度や新しいことに挑戦をすることに躊躇する国民性というものが少なからず関係しているようです。

停滞のボトルネック

よく言われますが投資規模の桁が一つ二つ少ない感じがします。ですので米中英とのギャップは依然大きく、スタートアップの資金循環も細いです。結果として、基礎研究はしっかりしていても、事業化へつなぐ勢いが生まれにくくなってます。またChatGPTのような最先端トピックの教育実装の遅れと、英語が中心となる国際共同研究に対する若い人の参加があまり積極的ではないようです。


また人材不足、経営のコミットメント不足、そしてリスク回避の文化が意思決定を遅らせているように感じます。社会全体が過度な“安全”に傾くほど、企業は一歩を踏み出しにくい・・・。これが、今の日本のAIに対しての活力を削ぐ構造的な問題かと思います。

韓国の現状:産官学の“垂直サプライチェーン化”

韓国のAI競争力における躍進の核心は、政府、財閥、そして大学が一体となって機能する、強力な産官学連携モデルにあります。大学の基礎研究は企業の巨大な開発リソースに直結し、出口での商業化までを一気通貫で走らせます。特許と知財戦略は苛烈で、成果を権利化して次の投資財源へ転化する循環が整ってます。さらに、バイリンガル人材と海外経験の循環を公的に支援し、国際市場を前提とした人材エコシステムを維持しています。研究→応用→商業化の距離と時間が短いことが今回の飛躍の要因になります。

UAEの現状:国家ビジョン×巨額投資×計算インフラ

UAEは「AI国家戦略2031」を掲げ、AI担当大臣の設置、世界初のAI専門大学院大学「ムハンマド・ビン・ザーイド人工知能大学(MBZUAI)」の創設、データセンター群の整備で、ビジョン・頭脳・計算資源を一気にそろえました。国内人材の育成に時間をかけるのではなく、資本力で世界のエリートを「輸入」し、一気にイノベーションの中核を形成するという「AI重商主義」ともいえる戦略です。

日本の方向:基盤モデル競争から“垂直統合の実装主義”へ

では、日本はどうするべきなのでしょうか?

巨大資本を要する汎用LLMの正面決戦ではなく、日本の持つ比較優位にある領域で勝負することが最善です。製造業、ロボティクス、ヘルスケア、建設、物流のように“現場データと品質管理が価値の源泉となる領域で、世界トップクラスの品質管理能力、豊富な現場データ、そして暗黙知として蓄積された高度なノウハウが存在します 。これらの資産とAI技術を深く結合させることで、米国や中国の巨大テック企業が容易に模倣できない、「高精度」かつ「高信頼性」を特徴とするドメイン特化型のAIソリューションを構築できるはずです。

日本は既存の優れたインフラと高い産業品質という強固な基盤を持つ一方で、その上で展開されるAI戦略は各企業の自主性に委ねられることが多く、国としての統一された推進力にはなかなかなりません。リスク回避的な文化が大胆な投資と迅速な実装を妨げ、結果としてスピード感で他国に劣後しているのでそのあたりを意識して打ち破らないといけないでしょう。

まとめ

日本も韓国同様に政府、企業、大学が一体となった強力なエコシステムを形成し、基礎研究から商業化までをシームレスに繋げるような施策を取り入れたほうが良いと思います。特に日本の強みを持つ特定領域へ研究開発予算を集中させるべきです。

また、僕らのような中小企業は、無理をせずに自社の課題解決に特化した小規模なAIツールやクラウドサービスの導入に挑戦していきましょう。まだ何から手を付けていいのか分からない経営者さんは業務の自動化や効率化に焦点を絞り、まずはいじってみてください。地域のITベンダーや公的支援機関に相談し、専門家の助けを借りながら、自社にあったデジタル化を着実に進めることが競争力維持の鍵となります。