2026年、AIが与えるマーケティングへの影響

AI

はじめに

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、早速ですが2025年が生成AIの「実験と導入」の年だったとすれば、2026年は自律的にタスクをこなす「エージェントAI」が主役となり、マーケティングのあり方を根本から変える年になるかもしれません。この変化は、単なるツールの進化ではありません。検索のルール、顧客との関係づくり、そしてデータ戦略そのものが再定義される、大きな転換点となるかもしれません。

今年最初のブログでは、この変化の本質を深掘りしながら、AI時代を勝ち抜くための対策としての一つの提案をしていきたいと思います。

1. 2025年から2026年へ:AIがもたらすマーケティングの構造変化

AIによるマーケティングの変化は、2025年の実験的なフェーズを終えて、2026年には「実行」フェーズへと移っていくと思われます。もちろん、その中核にあるのが、AIの役割そのものの変化です。

1-1. 「支援」から「自律」へ:エージェントAIの台頭

2026年のマーケティングを定義する最も重要なキーワードが「エージェントAI」です。これまでの生成AIは、人間の指示に基づいてコンテンツを作る「支援役(Copilot)」でした。でもエージェントAIは違います。目標を与えられると、自分で計画を立て、外部ツール(CRMや広告プラットフォームなど)を使いこなし、タスクを完了させる「代理人(Agent)」へと進化するんです。

つまり、マーケティングプロセスの一部が自動化されるのではなく、ワークフロー全体が自律的に動くようになってくるということ。今年中にどこまで進むのかは分かりませんが、デロイトの予測によれば、世界のエージェントAI市場は2030年までに最大450億ドルに達する可能性があり、この技術がビジネスの中核インフラになることは間違いありません。

1-2. 2025年と2026年の決定的な違い

2025年の「実験の年」から2026年の「実行の年」への移行は、マーケティングのあらゆる領域に変化をもたらします。主な違いは下記のように予想します:

AIの形態: Copilot(支援型)→ 自律型エージェント

人間の役割: プロンプト入力者 → 目標設定・監視・倫理判断

検索・発見: SEO(キーワード重視)→ GEO(引用・AIにとって識別可能な固有名詞の情報単位、つまりエンティティ重視)

パーソナライズ: ルールベース → リアルタイムの予測・ハイパーパーソナライゼーション

主要な課題: 「AIの使い方がわからない」→「データ品質と信頼性の担保」

2. 検索の未来:SEOからGEO(生成エンジン最適化)へのシフト

昨年から触れてますがAIの進化は、検索エンジンの役割を根底から変えていきます。これはSEOを実施してきた人には、脅威であると同時に大きなチャンスでもあります。

2-1. 「クリック競争」から「引用される競争」へ

従来のSEOは、検索結果の上位表示を目指して、クリックを奪い合う「クリック競争」でした。でも、AIが検索結果を要約して直接回答を出してくれる時代では、競争のルールが変わります。これからの主戦場は、AIの生成結果に自社の情報が「引用・推奨される競争」へと移っていきます。

この変化は、ユーザーが単なる情報収集ではなく、もっと深い課題解決や意思決定のサポートを検索に求めているということの表れです。Profound社の分析によると、Reddit(アメリカ合衆国の掲示板型ソーシャルニュースサイト)は主要なAIモデルで最も多く引用されるサイトの一つになっています。これは、AIがアルゴリズムだけでなく、信頼できる情報源として「人間のリアルな対話」やコミュニティでの議論を重視していることを示しています。つまり、AIのナレッジグラフの中で権威ある存在として認識されることの重要性がどんどん高まっています。

2-2. GEOで勝つためのコンテンツ戦略

GEO(生成エンジン最適化)で成功するには、コンテンツ戦略を根本から見直す必要があります。小手先のキーワード対策はもう通用しません。AIのナレッジグラフの中で、自社を特定のトピックにおける権威ある「エンティティ」として確立させることが目標になります。

そのために企業は、AIアシスタントの回答に引用されることを目指して、以下のような高度なコンテンツ戦略を実行する必要があります。

エンティティ・オーソリティの構築: 自社が誰で、何の専門家なのかを明確に定義し、そのエンティティに関連する情報を網羅的かつ構造化されたデータで提供する。

「課題解決」と「意思決定の前段階」クエリへの対応: 「〇〇 おすすめ ランキング」のような単純なキーワードではなく、「〇〇を選ぶ際の注意点」「〇〇を導入する前に検討すべきこと」といった、ユーザーの深い悩みや意思決定プロセスに寄り添う専門的なコンテンツを充実させる。

3. AI時代だからこそ重要になるオフライン・クロスメディア戦略

デジタルマーケティングの自動化・効率化が加速する中で、企業の競争力を左右するのは、皮肉にも「オフラインでの顧客接点」と、それをデジタルに統合する「クロスメディア戦略」です。

なぜなら、マーケティングの意思決定を行う「エージェントAI」の精度は、学習させるデータの質と独自性に完全に依存するからです。

現在、プライバシー規制の強化により、Web上だけで個人の詳細な行動データを収集することは困難になりつつあります。一方で、店舗での対話や購買といった「オフライン接点」から得られる一次情報(ファーストパーティデータ)は、競合他社がアクセスできない、極めて純度と希少性の高い資産です。

AIが最適な広告配分やパーソナライズを行うためには、Web上の行動履歴だけでなく、この「リアルな体験データ」を統合して学習させることが不可欠です。つまり、AIを賢くするためにこそ、泥臭いオフラインのデータが今、最も重要な鍵を握っているのです。

3-1. ファーストパーティデータこそが最強の資産

デロイトの調査結果によれば、ファーストパーティデータの活用を優先する組織は、そうでない組織と比べて顧客生涯価値(LTV)で大きくリードしています。オフラインイベントの参加者リスト、店舗での会員登録、営業担当者がCRMに入力した情報など、あらゆる顧客接点が貴重なデータの源になります。

3-2. オンラインとオフラインを繋ぐ「クローズドループ」の実現

多くの企業が抱える悩みは、オンラインでの広告施策と、実店舗での購買といったオフラインでの成果が別々になってしまっていることです。この分断を解消して、マーケティング活動の全体像を見える化することが、2026年のマーケティングで意識をするべきことです。

シームレスなオムニチャネル体験: BOPIS(オンラインで購入して店舗で受け取る)のような、オンラインとオフラインを融合した購買体験は、もはや当たり前になっています。BOPISの市場規模は、2026年に米国だけで1,310億ドルを超えると予測されていて、顧客がチャネルを意識せずに行動していることの証拠です。

リテールメディア(RMN)の成長: オンラインの閲覧データと実店舗での購買データを完全に紐付けられるリテールメディアは、クローズドループ(顧客獲得から成約までの全プロセスを追跡し、データに基づいてマーケティング活動を継続的に最適化する手法)の理想形です。日本市場でも、2026年には805億円規模に達すると予測されていて、広告主にとってROIを正確に測定できる魅力的なチャネルとして成長を続けています。

3-3. オフラインコンバージョン計測の仕組みと重要性

「オフラインコンバージョン・トラッキング」は、クローズドループを実現するための具体的な技術です。これは、オンライン広告のクリックが、どのようにして実店舗での購入や電話での問い合わせといったオフラインの成果に繋がったかを計測する仕組みです。

具体的には、ユーザーが広告をクリックした時に発行されるGCLID(Google Click ID)のような固有の識別子を、ウェブサイトのフォームやCRMシステムで記録しておきます。その後、店舗での購買や電話での成約といったオフラインのコンバージョンが起きた時に、その成果データと記録しておいたGCLIDを広告プラットフォームにアップロードします。これによって、プラットフォームはどの広告が実際の売上に繋がったのかを正確に紐付けられるようになり、広告の本当のROIを測定できるようになるんです。

これは、デジタル上の「引換券」だと考えてみてください。ユーザーが広告をクリックした時に、企業は固有の番号が書かれた引換券を渡します。後日、そのユーザーが店舗で購入したり、営業に電話したりした時に、その引換券を提示してもらうわけです。この引換券を回収することで、どの広告が現実世界の売上に繋がったのかを正確に証明でき、オンラインの広告費とオフラインの収益の環をようやく閉じることができます。

4. 2026年の消費者を理解する:変化する価値観と行動

AIやデータ戦略を語る上で、その対象となる「消費者」の気持ちを理解することは欠かせません。2026年の消費者は、より現実的で、意図的な選択を行うようになっていきます。

4-1. 経済性、シンプルさ、そして「意図的消費」

世界的な経済の不透明感を背景に、消費者の行動原理は変わってきています。Experianの調査によると、世界の消費者の32.8%が「前年より経済状況が悪くなった」と感じています。その結果、ブランドが掲げる理想的な価値観よりも、日々の生活に直結する経済的な安定、コスパ、そしてシンプルさを優先する傾向が強まっているんです。

消費者は無駄な情報や複雑な選択を避けて、自分の時間と予算に見合う、最も合理的でスムーズな購買体験を求めています。この「意図的消費」へのシフトは、画一的なデジタル広告がますます効かなくなることを意味します。2026年の成功は、リッチなファーストパーティデータやオフラインデータを活用して、消費者の時間と予算を尊重した、極めて関連性の高いメッセージを届けられるかどうかにかかっています。

4-2. プライバシーを巡る信頼の構築

消費者は、パーソナライゼーションに関して複雑な感情を抱えています。これは「パーソナライゼーション・パラドックス」と呼ばれていて、マーケターが向き合うべき重要な課題です。

McKinseyの調査では、顧客の71%がパーソナライズされた体験を期待している一方で、Netguruの調査では、そのために自分のデータを提供することが、プライバシーのリスクに見合う価値があると感じている消費者は41%です。

これは企業が一方的にデータを集めて使うのではなく、データ利用の透明性を確保して、顧客との信頼関係を地道に築いていくしかないと思います。顧客が「自分のデータを提供することで、これだけ価値のある体験が得られる」と納得して初めて、持続可能な関係が築けるのです。

5. まとめ

2026年のマーケティングは、昨年同様にAIを取り込み、意識した新しい戦略的な考え方が求められます。

AIの進化: 2026年は、AIが単なる「支援ツール」から、目標達成のために自律的に動く「実行者」へと進化する。

検索の変化: 検索の主戦場は、従来のSEOからAIの回答に引用されることを目指すGEOへと移っていきます。エンティティとしての権威性が、これまで以上に重要になります。

データの価値: AIによる自動化が進むほど、その判断の基盤となるファーストパーティデータの価値が高まります。信頼の源はデータです。

戦略の融合: オンラインとオフラインを統合して、広告効果を正確に測定するクロスメディア戦略が、企業の持続的な競争力に繋がります。

ファーストパーティデータの基盤を構築し、GEOに適応し、オフラインとの連携を強化しない企業は、商機を逃してしまうかもしれません。

AIとアルゴリズムが前提となる時代でも、最後に価値を決めるのは、それらのツールから得られるデータを読み解き、戦略を立て、そして何よりも顧客と真摯に対話し続ける「人の洞察、共感、判断」だと思います。あまり考えすぎず、まずは変化の波に乗って、新しい時代を楽しむような感じで進めてみましょう。

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