小売り・飲食業界でのAI活用例
近年、小売や飲食業界では「人手不足」や「人件費高騰」「食品ロス」「多様化する顧客ニーズ」といった課題が山積しています。しかし、AIの導入によって、これらの課題を単なる解決に留めず、「新たな収益機会」として活かす動きもあります。
今回は、AIを活用した国内外の先進事例をわかりやすく紹介しながら、中小零細企業が無理なく取り組めるスモールスタートの進め方、そして“AIと共存する仕事づくり”のヒントをお届けします。
小売店・飲食業界でのAI
少子高齢化による深刻な人手不足と、それに伴う人件費の高騰は、国内の小売・飲食業界が直面する大きな構造課題です。消費者ニーズは多様化し、「パーソナライズされた体験」「OMO (Online Merges with Offline) 、-オンラインとオフラインの境界をなくし、顧客がシームレスに購買体験を得られるようにするマーケティング戦略-」は当たり前になりつつあります。こうした背景の中、膨大なデータを活用して効率化しつつ、顧客体験を高めるAIは、業務ツールの枠を超えて、企業価値そのものを再定義する戦略的な武器となっています。
国内の事例から見るAI活用の効果
ベーカリーの自動レジと店舗ロボット
AIカメラがトレイ上のパンを自動認識する全自動レジ『BakeryScan』を導入しすることにより、新人でも即戦力化、入力時間の半減に成功しています。また、大阪万博では「アバターロボット」がセブンイレブンの店内を巡回し、遠隔地のスタッフが接客対応する未来型店舗が話題となりました。
需要予測とロボ活用で省人化
スーパーマーケットや飲食店では、AIによる需要予測・自動発注・配膳ロボットの導入が進んでいます。例えば、在庫ロスや欠品を削減しながら、人件費削減にも成功する企業が増えています。飲食店では、タブレットによるセルフオーダーやAIによる需要予測で注文業務を効率化し、スタッフが本来の接客に専念できる環境が整いつつあります。
世界のリーダーに学ぶ「攻めのDX」
レストランの未来—ロボットと無人化の進展
AIとロボットによる注文管理・自動キッチン・無人レジなどが実現しつつあり、接客やエンタメ要素を付け足したようなレストランが近い将来できるかもしれません。ロボットシェフによってパスタを作る「P‑Robo」のような事例が、日本でも現実になりつつあります。
デジタルツールが変える顧客体験
AIによる「スマートメニュー」「ダイナミックプライシング」「予約・在庫・レコメンドの自動化」「メニュー開発支援」など、飲食業界の顧客体験は続々と進化しています。一方で、AIによるスタッフの笑顔や声のトーンをスコア化するシステムも登場し、倫理的な議論も進んできています。
中小企業が取るべきAI導入ロードマップ
スモールスタートとKPI設定
大規模な導入はハードルが高いですが、「鍋食材」など特定領域に絞ったAI導入で、成果を上げた地域スーパーのマルイの事例があります。年間で粗利益90万円の増加と216時間の作業時間削減に成功しました。まずは自社課題を明確にし、廃棄ロス削減率など明確な KPI を設定することが成功の鍵のようです。
AIと人間のハイブリッドな働き方
AIは単純作業やデータ処理のアウトソース先ではなく、創造性や気配りなど人間の強みを引き出す“相棒”としても有益です。焼肉きんぐの配膳ロボット(配膳と下膳にAIロボットを活用し、スタッフのキッチンと客席間の往復移動や重量物の運搬作業を削減)は、スタッフが顧客とのコミュニケーションに集中できる環境づくりに一役買っており、AI導入の大きな効果となっています。
まとめ
- データを整理しまとめることがすべての出発点です。店舗データと顧客データを一元管理し、洞察を生むインフラを整えましょう。
- 自社の課題を起点に、スモールスタートを実践し、効果を検証しながら展開する柔軟性が重要です。
- 人間中心のDX:AIに人間性を奪わせず、時間を生み出して接客や創造に投資する方向へシフトしましょう。
- 生成AIなどへの実験投資は抑えた範囲からでもスタートできます。SNS投稿文や新メニューのアイデアなど、すぐ試せる領域から始めて、徐々に活用範囲を広げていくことで、未来の準備ができます。
AIはもはや、選択ではなく「現実の行動」そのものです。その変化を「脅威」ではなく「好機」と捉え、自社の未来を切り拓く第一歩を踏み出しましょう。
-
前の記事
非エンジニアでもアプリを制作することができる 2025.08.17
-
次の記事
記事がありません