自動化時代を勝ち抜く

生成AIがアップデートしていくたびにその性能が向上して、また生成AIの社会実装が一気に進むにつれて、現実問題としてAIが雇用に大きな影響を及ぼすことが表面化してきています。アメリカでは今年に入り7月までに一万人以上の雇用が生成AIの導入によって奪われました。
https://www.cbsnews.com/news/ai-jobs-layoffs-us-2025
今、起きているのは職業そのものが消滅していくのではなく、仕事を構成するタスク単位での自動化と、スキル需要の地殻変動です。今回は、AI経済でなお価値を高め続ける仕事や働き方、リスキリングまでを、経営者・個人双方の視点から実践的にまとめてみたいと思います。
AI時代の自分の市場価値
多くの職業は、業務全体の3割前後が自動化可能である一方、100%自動化される仕事はごく一部に限られるといいます。つまり、AIは人間をまるごと置き換えるのではなく、人の手を煩わせてきた分析や整形、反復といった作業を肩代わりするのです。それでも現場が苦しむことがあれば、求められるスキルの中身が刷新される速度に、学習と人材移動が追いつかないからです。解決の鍵は、タスクの再設計と人材の再配置、そして計画的なリスキリングにあります。個人の側は、肩書きではなくスキルのポートフォリオを軸に、自分の市場価値を継続的に最適化する発想が必要です。
AIでは代替しづらいコアとは?
まずは、創造する力。生成AIは既存パターンの再結合には卓越していますが、問題の枠組みそのものを捉え直し、ゼロから概念や物語を立ち上げることは不得意です。アートディレクションや新規事業の設計、ビジネスモデルの発明といった「Why」を規定する力は、テクノロジーが進化するほど希少性を増していくものと考えます。
第二に、コミュニケーションの力です。交渉や合意形成、顧客やチームとの信頼の構築は、言語化できないニュアンスや文化的背景、感情への配慮がとても大事です。医療、教育、セールス、マネジメントなど、共感と判断が価値の中心にある領域では、人々をつなぎ合わせるコミュニケーションがカギの為人間の優位の状態がしばらくは続くと思います。
第三に、複雑なことを処理する為のさじ加減です。データの処理や要約をAIに委ねられるほど、何を問題と見なすか、どの仮説を検証するか、理屈では測れないことへの判断やさじ加減では、課題設定とフレーミングの重要性が増します。どのような情報を利用するのか、そのリスクの引き受けを伴う意思決定は、依然として人間の戦略的思考が舵を取ります。
第四に、倫理基準です。公平性や透明性、プライバシーや知財の扱い、説明責任と安全性など、AIガバナンスの設計は、法・哲学・社会科学とテクノロジーの幅広い知識を必要とします。規制が整備されるほど、この専門性の市場価値は高まります。
人的資本経営としてのAI活用
企業は、従業員の努力に依存するのではなく、AIへの学習を組織の仕組みに埋め込むべきです。オンライン学習プラットフォームへのアクセス、社内メンターやピアレビュー、学習成果を評価や報酬に反映するルールを整備し、現場主導の実験を歓迎する文化をつくります。職務を見直してタスクを分解し、AIへの委譲を前提に人間の仕事を上流へ移すことで、生産性とエンゲージメントは両立します。何より、経営層自身がリスキリングの先頭に立ち、AIの可能性と限界を体感して意思決定を更新することが不可欠です。
まとめ
最終的に、AI革命の未来は、技術によって自動的に決定されるものではありません。それは、僕たちがこの強力な新しいツールでどのような社会を築くために、どのように使うかという、僕たち自身の選択にかかっています。AIは人間の知性を模倣し、時に凌駕するかもしれません。しかし、価値を定義し、目的を設定し、どのような結果を作るのか・・・それは依然として僕たち人間なのです。変化の波を上手くとらえて、AIで新たな価値創造の大海へと漕ぎ出すのは、これからを生きるすべての僕たの目の前に広がる、挑戦であり機会だと思います。
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