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先週の気になるAIニュース

先週の気になるAIニュース

この1週間で何が動いたのか

先週の気になるAIニュース関連は、国際ガバナンスの加速、日本でのAIの産業への応用向、自動運転の実地試験、そしてAIが貿易や労働市場へ与える影響について動きがありました。国連総会に合わせ、AIが越えてはならない「レッドライン」を国際合意として求める呼びかけが広がる一方、日本国内では保険・自動車を軸に実装のニュースが続き、マクロではWTOやIMFがAIの経済効果を定量的に示しました。これらはバラバラの出来事ではなく、「安全と成長をどう両立するか」ということかと感じました。

国際ガバナンス:AI「レッドライン」と国連での議論

200名超のノーベル賞受賞者や元首脳、研究者が署名した「Global Call for AI Red Lines」は、2026年末までに「AIの絶対に越えてはならない境界(レッドライン)」を国際的に合意すべきだと訴えってます。AIが人間を偽装したり、自己複製など、深刻なリスクに直結する振る舞いを禁止対象として明示し、独立した執行機関の必要性も訴えています。この呼びかけは国連総会の会期に合わせて立ち上がり、安全なAIの国際合意の遅れに警鐘を鳴らしています。

同時期に国連安保理でもAIの軍事転用や偽情報リスクが主要議題になり、各国代表が「無視できない利点」と「深刻な危険性」で議論しました。ここから先は、国家安全保障と産業競争力を両立させる制度設計――つまり“安全に速く進む”枠組みづくりが焦点です。

日本では保険×AIエージェントと自動運転の実地試験

日本では、東京海上ホールディングスがOpenAIと提携し、商品企画や顧客対応で活用するAIエージェントの共同開発に踏み出しました。営業拠点の戦略立案で「Deep Research」ツールの活用も示され、保険という規制産業における生成AIの本格導入を象徴する動きです。

自動運転では、東京の公道で日産「Ariya」を使ったレベル2自動運転技術のテストを開始。最終的には 2027年頃の商用化を目指しています。地図の事前整備に依存しにくい“エンボディドAI(人工知能が物理的な身体を持ち、実世界との相互作用を通じて知覚・学習・行動を行う仕組み)”志向のアプローチは、混雑・複雑な道路環境の日本に適した進化系として注目です。

セキュリティ・リスク:サイバー軍拡と対応

先週は、またAIエージェントを攻撃・防御の両面で使う「サイバー軍拡」の構図が改めて注目されました。自律型AIが標的ごとの脆弱性を突く“ゼロデイAI(ソフトやプラグインの脆弱性が発見されても修正パッチが出ていない「ゼロ」の状態を突く攻撃)”の脅威がメディアで解説され、検知とレスポンスをAIで増強する“AI-DR(AIによる検知と対応)”の重要性が浮上しています。事業側はモデルの堅牢化やレッドチーミング(AIシステムの開発者や提供者が、対象のAIシステムに施したリスクへの対策を攻撃者の視点から評価するための手法)の内製・外部委託を計画に組み込む段階きていると言われています。

貿易・労働市場・次世代スパコン

WTOの年次報告は、適切な政策と技術普及が進めば、2040年までにAIが世界貿易を約34〜37%押し上げ、GDPも12〜13%増加し得ると試算しました。一方で、キャッチアップが遅れる地域では格差拡大のリスクも示されています。企業や自治体は、サプライチェーンの再設計や越境ECの高度化を“AI前提”で描き直す必要があります。

IMFのワーキングペーパーは日本の労働市場とAIに関して次のように述べています。日本の労働市場は、高齢化とAIの進展という岐路に立っています。高齢化は人手不足や生産性低下といった課題を深刻化させる一方、AIはこれらの課題を解決する可能性を秘めています。AIの恩恵を最大限に活用し、構造的な課題に対応するためには、労働者が異なる職種間を移動しやすくするためのスキル移転を促進する政策が不可欠であると結論づけています。

次世代スーパーコンピューターでは、理研・富士通・NVIDIAが協業する次世代「FugakuNEXT」が公表され、AIとHPCを統合する基盤として2030年稼働を目指します。FP8精度で600エクサFLOPSを超える計算性能を見込み、現行「富岳」と比べ最大100倍のアプリケーション性能向上を目指すそうです。

まとめ

先週気になるニュースの要点は、①国際的なAI「レッドライン」合意づくりの加速、②日本での保険・自動運転におけるAIとの組み合わせ、③AIが貿易・労働へ波及する長期トレンドの具体化—の三点です。今後は「安全に速く進む」競争が主戦場になりそうです。大企業だけではなく中小企業としても自ら動きながら情報を取り、「安全に速く進む」AI体制整の準備が必要になるそうです。社内AI方針の更新、小規模エージェント実験などを意識してみてくださいね。