Google検索で日本語版「AIモード」がついに始まる

日本における正式展開
2025年9月9日、Googleは「AIモード」の日本語提供開始を正式発表しました。AIモードは「すべて/画像/ニュース」と並ぶ独立した検索タブとして提供され、PC・モバイルのブラウザとGoogleアプリ(Android/iOS)から利用可能になります。提供は数日〜数週間での段階的ロールアウトで、同時にインドネシア語・韓国語・ヒンディー語・ポルトガル語(ブラジル)にも拡大していくそうです。
進化の流れ:SGE → AI Overviews → AIモード
実験から日常へ、そして“モード”へ
- 2023年8月:生成AIを検索に統合する実験「SGE(Search Generative Experience)」が日本で開始(Search Labsでのオプトイン)。
- 2024年:SGEはAI Overviewsとして標準機能へ段階移行。2024年10月には100+か国に拡大し、月間10億人超が利用する規模に
- 2025年:AIモードが米国から本格ロールアウト。従来の検索UIの上に「回答ボックス」を載せるのではなく別タブの“検索モード”として位置づけられ、日本語版が9月に登場。
この2年間の流れは、単なる名称の変更ということではなく「リンクを探す検索」から「課題解決のための対話」へというパラダイム転換をユーザーに段階的になれさせようとした戦略だったかもしれませんね。
アーキテクチャ:Gemini 2.5 × Query Fan-Out
エンジン:Gemini 2.5の検索特化版
日本語のAIモードはGemini 2.5のカスタム版を採用。従来なら複数回に分けて投げていた長文・複合問いを1回の対話で処理する設計です。初期ユーザーのクエリ文の長さは従来の2〜3倍というデータも示されています。
要となる「クエリ・ファンアウト」
AIモードは、1つの複雑な問いをサブトピックに分解し、並列で複数の検索クエリを実行してから統合する「Query fan-out」という手法を中核に据えてます。これにより、従来検索より広く深くウェブを探索し、関連性の高い情報を網羅的に収集できるようになったと言われています。
Deep Searchと“エージェント的”振る舞い
より深い調査に特化したDeep Searchや、まずは米国の実験から始まったレストラン予約のような“エージェント的”機能の実装も進み、OpenAIなどの競争がますます激しくなりそうです。
キーワードから「相談」へ
AIモードでは、ユーザーは要件を自然文で一気に投げる傾向が強まり、追かの質問やその文脈も保持されます。あくまでも想像なのですが日本語版の登場で、母語で指示→多言語ソースから統合→母語で回答という利用が一般化し、言語の壁が実質的に低くなるかもしれませんね。
「ゼロクリック」論争とトラフィックの現実
AIモードになると、クリック流入の減少を懸念する声は強まります。他方でGoogleは、総オーガニッククリックは概ね安定、クリックの“質”は上がっていると反論。AI概要やAIモードのリンクカードCTRは従来より高いという説明も繰り返しています。
現時点として、AIの回答に要約されやすいように構造だけでなく「中身」も見直し、ユーザーが抱える課題の解決策となるようなコンテンツつくりを構築することが必要そうです。
SEOから“LLMO”へ
何度かブログにも書いてますが、改めてAI検索時代に対応するLLMO(大規模言語モデル最適化)を説明します。
1)E-E-A-Tの徹底(一次体験×専門性)
Googleは一貫して人間のための有益で信頼できるコンテンツを評価軸に据えています。一次体験(Experience)や検証可能な専門性を、著者情報・出典・方法論で明示しましょう。
2)AIが“引用しやすい”構造(パッセージ最適化)
見出しを質問形にし、その直後に結論の要点を簡潔に置く。手順は番号リスト、比較は表、FAQはFAQPageスキーマなどでAIクローラーが読みやすくする。
3)“AI耐性”の高いコンテンツ領域
独自レビュー(一次データ・写真/動画豊富)、強い論説、コミュニティ由来のUGC(一般の消費者が自発的に作成・発信するコンテンツ)などは、要約だけでは代替しづらい価値になります。
“LLMベースのクローラーに対してのUX”という新発想
AIモードは大量で高品質な最新情報を必要とし、その供給元はオープンウェブです。したがって、サイトは人間のUXに加えて“LLMベースのクローラーに対してのUX”――構造化・鮮度・整合性・引用可能性――で設計・運用されるほど、AIに取り込まれやすく、表示されやすくなると言われています。
いま取るべき具体アクション
コンテンツ
- 一次体験×専門性を示す記事・調査・ケーススタディを増やす(著者情報・出典・方法の明記)。
- 質問見出し→即答→根拠の順でパッセージ最適化、FAQやHowToを構造化。
テクニカル
- FAQPage/HowToスキーマの実装と更新運用の仕組み化。
- 商品フィード(在庫・価格・属性)を“常時・完全・正確”に保つワークフローを整備。
計測
- 従来の“検索順位やCTR(クリック率)だけ”を見るのではなく、GoogleのAI回答(AIモードやAI Overviews)の中で“自社サイトが引用・リンクされているか”を見える化し、その推移を自社の確認・ログ・専用ツールで把握する。さらに“ブランド想起”や“指名検索(社名・商品名での検索)”の変化も並行して追い、総合的に効果を評価する。
まとめ
AIモードの日本上陸は、検索=リンク探索という前提の終焉を告げるものと感じています。
核にあるのは、Gemini 2.5×Query fan-outがもたらすディープな探索と統合、そしてマルチモーダル対話。ユーザー行動はキーワード入力から相談へ、サイトの役割は目的地から引用されるデータソースへと重心が移ります。「信頼できる情報源」や「分かりやすい構造」など基本的にはLLMOの内容はSEOと共通する項目が多いのですが、従来のSEOもやりながら、SEOで足りない部分のLLMOも意識して力を入れていくことが必要になります。
もし興味がある方は気軽にご相談ください。
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